【トークイベント】「火山×コーヒー」水と大地をめぐる三瓶の物語

イベント

島根県大田市・三瓶山のふもと、小屋原(こやはら)地区にあるコーヒーショップ「and people」の店主・安食賢一さんと、三瓶自然館サヒメルの学芸員・中村唯史さんによるトークイベント「火山×コーヒー 水と大地をめぐる三瓶の物語」が開催されました。

火山とコーヒー??

三瓶山は約5万年前の大噴火によって形成された活火山で、現在も噴火の可能性を残しています。火山礫や土砂でできており、この特徴が地域の豊かな湧き水の源となっています。

「洗面器の中に砂山を作ると、水がしみ込みつつ、あふれてきますよね?三瓶の湧き水はまさにそれなんです」と語る中村さん。

三瓶の湧き水は、周辺の農業を支え、そば・わさび・米など地域ならではの作物を育んできました。火山性の土壌は水はけがよく、根が深く伸びるため、野菜の味が濃く、甘みが出やすいのだそうです。

湧き水が当たり前にある暮らし

三瓶では、生活水の多くが「湧き水」。年間通して温度も変わらず、春でもあたたかく、冬でも凍りません。

洗い物、炊飯、そしてコーヒーなど、日々の暮らしの中に自然の水が当たり前のように溶け込んでいます。

外から訪れた人々は、地元の人々が当然と思っているその“美味しい水”や澄んだ空気、野菜の甘さに驚かされると言います。「あたりまえにある自然」こそが、三瓶の豊かさを物語っています。

 「特徴が無いのが特徴」な水

安食さんは三瓶の水のことを「特徴が無いのが特徴」と言われます。

コーヒーにとって水は焙煎から抽出まで味を大きく左右する重要な要素ですが、「and people」では三瓶の水が素材の風味を邪魔せず、すっと引き立ててくれるのだそうです。

都市では水質調整に手間がかかることもありますが、三瓶では自然がそのすべてを仕上げてくれているとのことでした。

香り高い「三瓶在来そば」

三瓶で古くから栽培されている「三瓶在来そば」は、寒暖差の大きさと水はけの良さという土地の特性が育てています。

その独特の風味が評価され、2020年には地理的表示(GI)保護制度にも登録されました。

「雨に弱い品種なので、水はけの良さが欠かせません。」と中村さん。また、交雑を避けるため、畑は一定の距離を空けて栽培されています。

幻の「三瓶わさび」、再生へ

かつての名産でありながら姿を消していた「三瓶わさび」の再生にも、地域の挑戦が始まっています。

安食さんは仲間とともに荒れた畑を整備し、湧き水を活用したわさび栽培を再開。今は50本ほどの試験栽培ですが、かつての在来品種を受け継ぎ、地元の特産品として根付かせていきたいそうです。

三瓶わさびは、日本に3つしかない在来系統のひとつとも言われており、貴重な存在です。

湧水が育む「透明感のあるお米」

小屋原地区では、標高200mの湧水を田に引いて米作りが行われています。年間を通じて約13℃という安定した温度の水は非常にクリーンで、味に透明感のあるお米を育てます。この湧水は下流の大田市街地にも流れ、地域全体の農業を支えています。

 「水瓶の山」としての三瓶

三瓶山は「水瓶の山」として地域から崇敬を集め、信仰とも結びついてきました。浮布池にある邇幣姫神社(にべひめじんじゃ)では、今も地域住民が水への感謝を込めて参拝する風習が残っています。

「大田の人たちが、三瓶の水に感謝して参る。米もコーヒーも、水がなければ成り立たないですからね」と中村さんは語ります。

イベントでは、安食さんが淹れた湧き水コーヒーを参加者が楽しむ場面も。さらに「いずれは三瓶でコーヒー豆の栽培も?」という夢のある話も飛び出しました。

都市では手に入らない「当たり前の贅沢」が、三瓶にはある。
そんな気づきと感動に満ちたひとときとなりました。

イベントは三瓶山のふもと「and people」で

今回トークイベントが開催されたのは、三瓶山のふもと・大田市三瓶町小屋原にある、自家焙煎コーヒーとお菓子のお店「and people」。三瓶の湧き水を使って丁寧に淹れたコーヒーと、お菓子を提供しています。

自然とともにある暮らしと営みについては、「大田発掘」でもご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

三瓶山のふもとに自家焙煎コーヒーとお菓子のお店がオープン☕️「and people(アンドピープル)」
素敵なカフェがオープン!!薪ストーブと美味しいコーヒーお菓子が楽しめます☕️
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