突然ですが、発掘スタッフの職場には月に数回スイーツの移動販売がやってきます。
クッキーやケーキ、総菜もたまに販売されているのですが、どれも手ごろでおいしくて、いつも楽しみにしています
そんなご縁もあり、大田市仁摩町にある障害者自立支援事業所「さざんか」の、ものづくりの現場と、その裏側にある温かい想いを深掘りしてきました!
「さざんか」では、利用者さん一人ひとりの特性や個性を活かしながら、実に多様な作業が行われています。
スタッフさんの温かいサポートのもと、14名の利用者さんが、クッキー・ケーキなどのお菓子の製造販売、縫製品や雑貨の製造販売、図書館清掃、除草(施設外就労)、自動車部品の組立作業、アルミ缶・スチール缶の回収・販売、農作業など、多岐にわたる活動に取り組んでいらっしゃいます。
室内の作業では、皆さん黙々と、それでいて驚くほど細やかな作業を進めていらっしゃいました。
今回は、特に「さざんか」の顔ともいえるお菓子の製造販売について、施設長の原幸子さんにお話を伺いました。
やさしい甘さと原料にもこだわった手間ひまの味 — 小さな工房のクッキー作り
離れにある工房を訪れると、焼きたての甘い香りがふわりと漂ってきました。
利用者さんは、丁寧に測りで計量したり、クッキーの生地を丸めていらっしゃるところでした。オーブンの中には人気のクッキーが焼かれている最中。
原施設長はにこやかに語ります。 「優しい味にしているんです。利用者さんが作りやすいよう、計量して丸める工程も決まっていて、みんな同じ形。でも中身はひとつずつ違うんですよ」
人気のひとつが、ごまをたっぷり使ったクッキーです。白ごまと黒ごまをたっぷり混ぜ込み、バターの代わりにサラダ油を使用。
「『罪悪感なく食べてもらいたくて』と、マーガリンは不飽和脂肪酸のこともあって使わないんです」と、原施設長の深い心遣いが伝わってきます。さらに、全粒粉クッキーの材料の小麦粉は岩手県産の国産小麦を取り寄せるという徹底ぶり。健康を気遣うお客様の中には、わざわざ原料表示を確認して購入される方もいらっしゃるそうです。
アレルギー対応から生まれる新レシピ
工房では、卵・牛乳・小麦などのアレルギーに対応したお菓子作りも行っています。
きっかけは保育園の卒園イベントからの依頼でした。
「卒園する子がアレルギーで食べられないから、みんなと同じようなお菓子を作ってほしい」と要望があり、試作を重ねたそうです。
小麦が使えないときは米粉を使用し、つなぎにはバナナを加えるなど、日々工夫を凝らしているそうです。 「事前に相談してもらえれば、卵、乳、豆がダメな場合でも対応できますよ」とのこと。アレルギーをお持ちの方も安心して相談できるのは、本当に嬉しいですよね。
移動販売でつながる、顔の見える「ご縁」 道の駅でも!
移動販売先は15か所ほど。
大田市役所に隔週の金曜日、職業訓練校やイベント会場などにも軽バンで出向きます。松江の県庁にも年2回伺われるとか。
「市役所の職員さんとは顔なじみの方も。『今日は何があるの?』と声をかけてもらえるのが、何よりも嬉しいんです」と原施設長。お菓子を介して、地域の人々との温かい交流が生まれているのが伝わってきます。
また、移動販売以外では「道の駅 ごいせ仁摩、道の駅 サンピコごうつでも購入できます。
ごいせ仁摩の冷蔵ケースには珈琲プリン、ヨーグルトムース、棚にはクッキー各種や箱入りの焼き菓子も並んでいました。
偶然の産物と定番の型抜きクッキー
ある日、試作中に偶然生まれた“ザクザク食感”のクッキー「ぎんざんチーゲル」が大ヒット
実はこれ、定番のココアクッキーの材料配合を間違えてしまったのが原因だとか(笑)。丸めるところを緩くなった生地を伸ばして焼いてみたところ… 「クッキーというよりパリパリのおせんべいみたい。でもそれが美味しいと評判で、あっという間に売り切れます」と原施設長も驚きの表情。
発掘スタッフもこれが大好き!手が止まらないおいしさなんです。
また、保育園イベントをきっかけに作り始めた型抜きクッキーも定番に。お母さんの手作りクッキーのような素朴な味とかわいい形が人気で、贈答用にも好まれています。
地域に根ざすお菓子作り
工房のお菓子は、地元イベントやスポーツ大会の景品としても活躍します。市内で開催されるフットサルの交流大会ではすっかりおなじみです。
「唐揚げやフランクフルトを出す店と並んで販売するのも楽しいですね」と原施設長。屋台が並ぶ中で、地域の方々と笑顔を交わしながら販売するのも、また格別なのだとか。
しかし、一番嬉しいのは「『また来てね』と言われること」だと言います。お菓子を通じて地域とつながり、利用者さんの社会参加を温かく見守っていらっしゃいます。
「これからもこのやさしい味を続けていきたいですね」。 原施設長の言葉には、お菓子への愛情はもちろん、利用者さんや地域への深い想いが込められていました。
「さざんか」のお菓子は、ただ美味しいだけじゃない。一つ一つに込められた丁寧な手仕事と、温かい心が伝わる優しい味わい。みなさんもぜひこの優しいスイーツを味わってみてくださいね。
さざんかでは、ボランティアの方や、農作物の寄付なども随時募集されているそうです。
形が不ぞろいでも大歓迎!地域の方が持ち寄られたものを美味しいスイーツやお惣菜に上手く調理されていました。
さざんかについて
住所:島根県大田市仁摩町天河内822
電話番号:0854-88-3342
定休日:土、日、祝祭日