毎年秋になると池田の町に黄金に輝く大銀杏。
晩秋になるとそろそろ?と発掘スタッフにも問い合わせが来ます。
今年は夏の猛暑のせいか、見ごろになったのは11月も後半、12月に入ってから。
週末にはライトアップに大勢の人が訪れました。
実はこの浄善寺の見どころは大イチョウだけではないのです。
今年は、ちょうど見ごろの時期にクラシックの演奏会がありました。
50人余りの人が絶景の元、美しい音色を楽しみました。
そんな浄善寺の魅力を住職の西原由美さんにお話を聞きました。
成り立ち
浄善寺は大田市三瓶町池田の浄土真宗本願寺派の寺院で、本尊は阿弥陀如来。元は石見銀山百か寺のうち西蔵坊との伝承があり、天文年間より浄善寺と呼ばれていました。
江戸時代には坂根谷(旧池田小学校跡地)にありましたが、明治五年(1872年)の浜田地震により倒壊。周辺も大きな被害があったそうです。その後、お寺は数百年の自然災害に耐えてきた大銀杏のある現在の場所に移りました。
現在の伽藍は地域住民が棟梁の仕事を手伝い30年かけて完成したそうです。災害復興の象徴となり、日々の人々の心の拠り所として親しまれています。
秋の絶景!黄金の大イチョウ
高さ30mの大銀杏は、現在の場所にお寺が移る前からあるので、樹齢600年と言われていますがはっきりしたことはわかりません。
10年前から紅葉が始まる季節の週末には、ライトアップが行われるようになりました。
黄金に輝く大木には、ブランコも設置してありフォトスポットとして若者にも人気です。
また落ち葉も美しく、地面を覆いつくす銀杏の葉も見どころのひとつです。
お寺で演奏会
これまでも紅葉の時期には三絃と筝曲などの演奏会が開かれていましたが、今年はなんとフランスと大森町に拠点を持っている、音楽家の破魔澄子さんとトーマ・プレヴォさんの演奏会を開催。
バッハよりも古い時代からあるお寺のこの本堂で、バッハの曲が演奏されました。
このコンサートの主催は住職の息子さんの西原由規さん。
昨年、偶然この大銀杏を見にお二人がお寺を訪れ、本堂にあるチェンバロとバッハの楽譜を発見。是非ここで演奏を!という話になり、今回の演奏会に繋がりました。
本堂の吸い込まれるような静けさに響く繊細なフルートの音色。
1部の最後の曲はアヴェマリアでした。美しい音色はコンサートホールとはまた違う響きなのでしょう。集まった人の中には、じっと見つめる人、目を閉じて音を感じる人など様々。同じ空間を共有してそれぞれ何を感じていたのでしょうか。
お寺にグランドピアノ?
このお寺にはもう一つ特別な楽器があります。
1903年に出来たベヒシュタインのグランドピアノです。このお寺が再建されて行われた上棟式が 明治30年(1904 年)でした。ドイツのピアノメーカー、ベヒシュタインの創立50周年が1903年で、その年にできたピアノだそうです。当時から120年経っていますが、このめぐり合わせもとても偶然とは思えません。
今回のこの演奏会にあたって調律師の方が来られて調律されました。
塗り直しを行い、ハンマーアクションなど、すべて新しいものにされたそうです。これでまた100年、演奏も続けていけるのでないかとご住職。
子供たちに本物を聞いてほしいということで、今回は子供も大歓迎!
「スピーカーを通した音ではなく、生の音を子供たちが聞ける場所というのはなかなかありません。聞いていた音が本物の音だったと、後になってから気づいてもらえば」と話されていました。
その想いは演奏者のトーマさんや破魔さんも同じで、偶然の出会いからこのような演奏会へと繋がったようです。
音色が美しく響きわたる本堂
西原さんによるとお寺の本堂は、読経や御詠歌などもあるため、音楽ホールのような設計になっているそうです。今回演奏された方々も演奏する場所で響きが異なるため、リハーサルを何度もされたそうです。そういえばお寺での読経、聞いていると落ち着きますよね。
地元出身の日本画家「田平玉華」の作品を展示
田平玉華(たびらぎょっか、1878~1923)は三瓶町池田の出身の日本画家。明治34年、23歳の時に「断魚渓秋色之図」を日本美術協会展覧会で受賞し、青年画家として一躍注目されました。明治40年東京博覧会に「隠岐国壇鏡之秋色図」で褒賞を受賞。東京生活10年の後、健康を害し帰郷、しばらく浄善寺に投宿した時に描き上げたものだそうです。療養を続けながらも各地を歩き傑作を残されていましたが45歳の若さで亡くなりました。
本堂内の襖は現在の本堂完成にあたり、日本画家田平玉華氏により寄贈された「浅間山」と「洞庭湖」があります。氏の中では一番大きな作品ということです。
浅間山の噴火の様子と湖の静けさ。お寺に滞在したのは震災後でしたが何かしら影響はあったのではないでしょうか。訪れた際には是非ご覧になってください。
人が集まる浄善寺
様々な出会いのある浄善寺は大イチョウだけではありません。
今回の演奏会では、スタッフに吹奏楽の強豪校北陵高校のOBさんや地元の飲食店さんが集まりました。西原さんは、「お寺を通して地域が回っていくようにしたい。イベントを通してお寺を訪れる方が増えると嬉しいんです。今回集まってくださった方は、皆さん熱心で団結力があるのでとりあえず進めていきました。そしてブラッシュアップさせていきました。まず自分たちで何でもやってみることを大切にしています」とお話してくださいました。
10月は、怪談と日本酒のイベントでも賑わいました。
今後もイベントなどが増えて、たくさんの出会いや交流を通して三瓶の輪が広がっていきそうですね!
すでに様々な企画が進んでいるそうですよ。これからの活躍が楽しみです!
西谷山 浄善寺について
西谷山 浄善寺
島根県大田市三瓶町池田2146
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