最も身近な食材のひとつ「卵」。島根県大田市波根町にある旭養鶏舎直売所が再開したと聞いて早速お店へ伺い、竹下靖洋社長にお話を聞いてきました。
人気の直売所
直売所は今年10年目。「自社の卵を使った食材を加工品としてお客様にお届けしたい」という竹下会長(先代社長)の長年の想いがあった中で、卵を加工してスーパーなどに納める業者さんも地元の卵を加工するところも無くなってしまったこともあり、決断して直売所を開設されました。
プリンや厚焼き玉子、茶わん蒸し、味付けたまごなど卵に特化した製品を展開し、3年前には工場を改修し、焼き菓子の製造・販売も開始。
北海道産クリームチーズを使ったタルト、季節の素材を活かしたロールケーキなどが人気です。
昨年10月、高病原性鳥インフルエンザが発症した際には直売所も閉鎖されましたが、今年3月から卵の生産を再開。5月には人気の直売所も再オープンされました。
本格的に再開された直売所には、取材の間にもたくさんの人が来店されていました。
店内では社長自ら商品を補充する姿も。発掘スタッフも含めて皆さん本当に待っていたのだなと感じました。
旭養鶏舎という会社について
昔から地元の若い方の就業率は高いそうですが、現在は島根県農業大学校や県内の農林高校などからも積極的に若い人材の採用を行っているとのことです。今後も、地元の高校や農業大学の企業説明会などに参加し、引き続き若い方々の採用に力を入れていきたいとお話しされていました。また、仕事柄、生き物を扱っているため、お正月やゴールデンウィークなどの長期連休の取得が難しい面もありますが、社員からの相談には年齢を問わず柔軟に応じる姿勢を大切にしており、特に若い社員にも「何かあれば遠慮なく相談してほしい」と声をかけていらっしゃるそうです。
こっこぶんこ(文庫)
平成28年から、本の世界を楽しみ、読書や言葉の世界を広げてほしいと市内の認可外保育所・地域型保育事業所などすべての園等22施設に対し、たまごやにわとり、食に関する絵本各10冊を寄贈されています。その数2,000冊以上!
子どもは国の宝だと思っているので何かお手伝いが出来ないかということで始められたそうです。
この他にも、飼料米を作っている田んぼでの田植交流会、県内農家さんへの鶏ふんの提供などの活動もされています。
県内シェアの25%
実はパックを開けていちばん最初に卵に触るのは私たち消費者。
コンベアーを利用した自動集卵装置でGPセンター(たまごの選別包装工場)に運ばれた卵は、洗卵・乾燥・殺菌・検査の後、パックに詰められます。ここまですべて機械により自動化されていて、「卵にいちばん最初に触れるのはパックを開けたお客様」というコンセプトのもと安心安全なたまごを届けておられるそうです。
また、工場内や農場は防疫に関してはかなり厳しく管理されていて、決まった人しか出入りはできないそうです。
鳥インフルエンザ発生後、様々な検査や調査をされたそうですが、これだというはっきりした原因がわからないということでした。
「目に見えないウイルスに対して、どのように防疫を徹底し、向き合っていくかが常に課題です。1度目の発生時ももちろん恐怖がありましたが、2度目となれば、次こそ本当に会社の存続が危うくなるという強い危機感を持っています。全国的に鳥インフルエンザが流行する中で、残念ながら廃業を余儀なくされる農家の方々も多くおられます。私たちも全国の仲間と情報や意見を積極的に交換しながら、できる限りの対策を講じているところです。」
越えて未来へ~復活の決意
昨年10月に起きた高病原性鳥インフルエンザの発生から約半年。
「私が生まれてからこれまで、会社に鶏がいないという状況は一度もありませんでした。今回の出来事は本当に初めてのことで、発生直後は現実とは思えず、まるで夢を見ているような感覚でした。しかし、すぐに関係機関をはじめ、多くの方々が再開に向けて動いてくださり、全国から励ましのお電話もいただきました。待っていてくださる方々の存在を思い、私たちも前を向いて歩んでいかなければと強く感じました。」
完全に生産体制がもとに戻るには、もうしばらくはかかるということです。これを教訓に地域企業として今まで以上に役に立ちたいと話されていました。
「大田には魅力的な企業がたくさんありますが、私たちもその一社であると自負しています。生まれ育った大田を一度離れていただくのも良い経験だと思いますが、いずれはぜひ戻ってきて、一緒にこの地域を盛り上げていきたいと考えています。また、弊社は“食”を支える第一次産業に携わっているという誇りを持っており、卵という食材を通じて人と人とをつなぎ、皆さまに元気を届けたいと願っています。」
竹下社長の「大変な時期を過ごしていた時に周りの協力があったからこそ、ここまでやってこられた」という感謝の気持ちと、これからの大田を見据えた会社としての決意を見せてもらえたような気がします。
食卓には欠かせない卵。
あるのが当たり前のように思っていましたが今回の取材で改めてその存在に感謝したのでした。
旭養鶏舎について
■有限会社旭養鶏舎
有限会社旭養鶏舎
住所:島根県大田市波根町221-1
TEL:0854-85-8421
■旭養鶏舎直売所
住所:島根県大田市波根町205
営業時間:9時〜17時
定休日:年中無休(不定休あり)
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